生前葬をすると人生はどう変わる?生前葬の準備方法/当日の流れ/費用の目安
目次
生前葬とは?
生前葬とは、本人の希望や意思に基づき、元気なうちに執り行う葬儀のことです。本人がまだ生きているとはいえ、当日は本葬のような本格的な祭壇を設け、親族はもちろん友人、知人など多くの参列者が招待されます。
生前葬の意味と行う目的
生前葬の目的は、自分が生きている間に、人生においてお世話になった方に感謝の気持ちを伝えることにあります。日常生活の中では、照れなどもあって家族や友人に面と向かってお礼の言葉を述べる機会は持ちにくいものです。
しかし生前葬を執り行うことで、自分が周囲の人に対して思っている気持ちを、正直に伝えることができます。
また、生前葬は本人がまだ生きているので、必ずしも宗教色を強める必要はありません。晩年を迎えた方で、終活の一環として自分の趣向に沿った形で葬儀を執り行っておきたい、と考える人も多いようです。
生前葬の特徴
生前葬の特徴としては、無宗教で自由な形式で執り行われることが多いこと、儀式やセレモニーという側面よりもパーティや会食という側面が重視されていること、などを挙げることができます。
生前葬に決まったスタイルはなく、「葬」という語がついているものの、仏式、神式、キリスト式の葬儀のような、宗教者を呼んで厳かに執り行う…といったケースは少ないです。
会場には、本人のこれまでの人生の軌跡を表す写真やゆかりの品々が合わせて展示されるのが定番となっています。また、本人と参列者がうちとけた雰囲気を作れるように、パーティや会食、宴会が同時に行われることも多いです。
生前葬を行うには
生きている間に行う生前葬ですが、実際に執り行う場合、具体的にどのような準備をすれば良いのかわかりにくい面もあるでしょう。そこで以下では、生前葬に向けて準備すべきこと、生前葬当日の流れ(式次第)、生前葬の費用相場について解説します。
事前に準備すること
近年の終活ブームも影響し、葬儀社の中で生前葬を取り扱っている業者が増えています。生前葬について詳しく知りたい、相談したいという場合、プロの業者を利用すると良いでしょう。
生前葬の会場として選ばれることが多いのは、実際の葬儀が行われるセレモニーホールをはじめ、ホテルや会館、レストラン、自宅などです。多くの知人や友人を招待する場合は、それに応じた広い式場を確保しなければなりません。
生前葬に招待されるのは、ご親族をはじめ、仕事上お世話になった方や趣味・サークルで会った友人、学生時代の友人などが多いです。招待する際は、各人に案内状を郵送します。
生前葬当日の流れ(式次第)
自由な形式で行われるのが生前葬ですので、執り行うに当たっては慣例上のルールなどは基本的にありません。ただ、一般的な傾向としては、以下のような手順で行われています。
- 司会者による開式の言葉
- ご本人の挨拶
- ご本人のこれまでの人生、自分史の紹介
※映像や画像を用いる場合は、事前に準備が必要です。 - ご来賓の方のご挨拶
※社会的な地位のある方にお越しいただいた場合、挨拶をお願いします。事前にお願いしておきましょう。 - 会食と歓談の開始
※本人が各席を回って挨拶します。 - ご親族や親しいご友人による本人への言葉
※事前にお願いしておきましょう。 - 余興などの実施
※招待された演奏家による演奏、ご親族やご友人による余興などが行われます。 - 司会者による閉式の言葉
ご本人が挨拶される際、参列者の方に対してなぜ生前葬を行うことを決めたのかをきちんと説明しましょう。自分史の紹介も、自慢話などではなく、周囲の人への感謝を込めた内容にすると、集まった方々にとっても充実した時間になります。
生前葬の費用相場
生前葬の費用は、会費制、もしくは主催者が全額負担する形により賄われます。会費制の場合、具体的な会費の金額は、事前に計算された生前葬の見積もりを予定される参列者の頭数で割って算出されるのが基本です。
実際の費用相場としては、ご親族と近しい友人のみで行う小規模な生前葬であれば30万円前後。レストランや宴会場を会場とする場合は、20万円前後で執り行うこともできます。高級ホテルを会場とする場合は、参列者10名ほどの規模で120万円前後、30名以上では150万円以上が相場です。
生前葬のメリットと注意点
生前葬にはメリットだけでなく、執り行うにあたって注意すべき点もあります。今後、生前葬のプランを考えるという場合、両方の側面をきちんと踏まえておく必要があるでしょう。
生前葬のメリット
生前葬のメリットとしては、生きているうちに本人が自ら周囲の人に感謝を伝えることができること、自分の希望通りの葬儀を執り行えること、などが挙げられます。
当然ですが、一般的な葬儀だと自分はもう亡くなっているため、親族や参列者に対して自らお礼を述べることはできません。しかし生前葬であれば、普段からお世話になっている方に感謝の気持ちを直接伝えることができます。
また、生前葬は自分が望むスタイルで自由に執り行える点が大きな特徴です。自分の趣味や生きがいなどをテーマにするなど、希望に沿った葬儀を企画することができます。一般的な葬儀では慣習上難しいことでも、生前葬であれば存分にできるわけです。
生前葬の注意点
生前葬の注意点=デメリットのひとつが、家族の理解を得ることが難しい場合がある、という点です。
本人が希望していても、執り行うには費用もかかるため、家族が承諾しない場合があります。生前葬は一般的な葬儀と同じく、家族の協力がなければ執り行えません。生前葬を行うのであれば、まずは家族にその理由や目的を理解してもらうことが大事です。
また、生前葬に対する社会的な認知度がまだ低いために、友人・知人に案内状を送っても意図を理解してもらうのが難しい場合もあります。
現状、生前葬は市民権を十分に得ているとはいえず、本人が存命中に葬儀を行うということに、矛盾や疑問を感じる方もいます。酔狂なことには付き合えないと、否定的な見方をする方もいるかもしれません。生前葬の案内状を送付する場合、生前葬をなぜ執り行うのかをきちんと説明しておかないと、誤解を受ける恐れがあります。
生前葬後に亡くなった場合に葬儀はする?
生前葬を執り行った後、本人はどのような生活を送ればよいのでしょうか。また、生前葬後に本人が亡くなった場合、改めて葬儀を執り行うべきでしょうか。以下では、生前葬の後に生じる疑問、問題について詳しく解説します。
生前葬を行った後の生活は?
生前葬を執り行っても、本人も家族も以前と同様の生活を続けることには変わりありませんので、生活上特別な変化生じません。生前葬の案内状を送ったものの、当日参会できなかった方に対しては、年賀状などでお別れ会の様子を伝えるのもひとつの方法です。
なお、生前葬は本人の不幸に伴い執り行われるわけではありませんので、年賀状のやり取りは問題なく行えます。
生前葬を行った後、他界した時に葬儀はする?
生前葬を行った方が亡くなった後、改めて葬儀を行うという場合がほとんどです。ただ、大勢の参列者を呼ばずに、近しい親族のみ集まって家族葬や密葬が執り行われる傾向があります。費用のかからない直葬、火葬のみを行う方法が取られることも多いです。
一方、仏教の檀家になっている場合は、慣習上、本人が亡くなったら改めて仏式による葬儀を執り行う必要があるケースもあります。その場合、葬儀費用も改めて発生するので注意が必要です。
生前葬を行った後、お墓や仏壇はどうする?
生前葬は終活の一部という意味合いも持ちます。生前葬をきっかけに自分の死後に関する関心を高め、お墓についてもきちんと決めておくのがよいでしょう。
また、それを機会に自分の遺品整理を進めておくというのもひとつの方法です。ただ、生前葬を行ったからといって、必ずお墓を用意しなければならない、どこかに引っ越さなければならない、といった慣習やルールはまったくありません。
ただし、生前葬を執り行うことにより、普段は会うことの少ない親族が当日集まります。その際、本人が本当に亡くなったあとの遺産相続をどうするかについて、生前葬をきっかけに改めて話し合いの場がもたれることも多いです。
話し合いがスムーズに進めばよいですが、激しい議論になるなど親族間の関係が悪化するケースもあるので注意しましょう。
まとめ
生前葬は本人が存命中に執り行う葬儀です。生前葬には人生の中でお世話になった方に生きているうちに感謝を伝えることができるという大きなメリットがあります。
また、無宗教スタイルで自由な形式により執り行うことができるので、自分の希望に沿った葬儀を行いやすいです。
しかし一方で、生前葬は社会的な認知度が低く、開催に当たってはご家族や周囲の方に理解を得られにくいという難点もあります。案内状を送る際は、生前葬の企画意図について本人が丁寧に説明する必要があるという点にも注意しましょう。
NHK「おはよう日本」でStoryが紹介されました