今思うと、普通の葬儀では味わえない会になりました
旅が大好きでたくさんの出会いがあったご主人を、多くの仲間が囲ったお別れ会。今回、奥様に当日の様子やご主人との思い出を振り返っていただきました。
「さよなら」を言えなかったら嫌でしょ
Story の事例が決め手となりました
ーーご主人・龍男さんとの出会いは?
私は東京生まれで埼玉県朝霞市に育ちました。 主人は当時、神奈川県横浜市に住んでいました。 初めて会ったのは、伊豆七島の式根島を旅していた時です。当時は離島がブームで、たまたま台風で延泊を余儀なくされたのです。 宿に閉じ込められてしまいましたので、グループでダイビングに来ていた主人 とその宿で出会いました。時間があるものですから一緒に写真を撮ったり、話をしたりするうちに仲良くなったと思います。
それが縁となりお付き合いを開始。 第一印象は飾り気がなく、あの人の友人関係にもすごく好感がもてました。1年ちょっとのお付き合いで結婚。一男一女をもうけました。子供たちが生まれてからも毎年、式根島へ。主人は三菱重工業でボイラー技士の仕事。入社当初は横浜のみなとみらい地区になったあたりが職場でした。ちょうどお別れ会の会場となったフリースペースの BUKATSUDO がそのあたりとなります。主人はよく話しをするほうです。どちらかというと私は聞き役かな。
ーーなぜお別れ会をしたいと思われましたか?
主人は食道ガンを患っていました。生前中から「葬儀はやらなくていい」と言っていたのです。会社関係も一人に言えばみんなに伝わるから、という人でした。 でも私は、お世話になった方たちにきちっと何らかの形で挨拶はしたいと考えていました。主人の余命を医師から聞いたこともあってネットで「お別れ会」 の検索をしていました。悪いとは思いながら、主人にも「さよならを言えなかったら嫌でしょ」と、伝えました。黙って逝ってしまうのはいけない。ですから、お別れを言いたい方の名前はリストにしておいてもらったのです。 ガンが悪化してから主人は毎日痛みと闘っていましたので、亡くなった後は早く火葬してあげたい、肉体から解放してあげたいと思いました。ですから直葬ですませ、ゆっくりお別れ会をしてあげたかったのです。
ーーSTORY に決めた理由はどうしてですか?
いくつか検索したなかで、過去のお別れ会の事例が参考になりました。私が希望するような感じでやらせていただけると思ったのです。これなら主人にも喜んでもらえると思いました。他社も検索させていただきましたがピンとこなかったのです。 Story のスタッフの方と打ち合わせを開始していくなかで、今まで閉じたままになっていたアルバムやメモ、遺品の整理をはじめました。改めて気づかされたことがたくさん出てきました。海に行っていた回数も想像以上に多く、すばらしい仲間たちにいつも囲まれていた。私より付き合いの長い方が多く、主人のことをずっと慕ってくださったことを知らされました。
ーー会費についてお聞かせください
最初は全部わたしがお支払いするつもりでおりました。ところが story のプロデュサーの井野さんから「当日、お香典をもってこられる方もいらっしゃるかもしれません」と言われ、会費制を提案されたので、その方がいいと思いました。
ーー会場の雰囲気はいかがでしたか?
お別れ会には、会社関係の方が多数参加していただきました。主人はよく社内で家族旅行の写真を見せていたそうです。人に見せるのが好きだったのですね。 Storyのスタッフの方々のアイデアが、会場を盛り上げてくれました。 フロアーの中央には祭壇を飾り彼が集めた貝が置かれました。そして右横には 遺影ではないのですが、主人がダイビングをしているときの写真を大きなパネルで展示。その写真に参加者のみなさんから、故人へ送るメッセージカードを張らせていただいたのです。心温まるお言葉に胸がつまりました。
参加していただいた方の中には、中学卒業と同時に三菱重工で働き通信高校も 一緒に通った方もいらっしゃいました。ほんとうに長いお付き合いをさせていただけたと思います。最近は金沢区にあった社屋もなくなり、会社関係の方もバラバラになっていました。そのためか、お別れ会が同窓会のようになったと思います。会では最後の上司の方、同期入社の方、海の仲間にも挨拶をお願いいたしました。長いお付き合いですから、心のこもったお言葉をいただき感動いたしました。
ーーお別れ会を終えて、ご感想お聞かせいただけますか?
多くの方にお別れ会をやっていただいて「ありがとう」と言われました。 会場には主人が集めた貝も展示させていただきました。その貝で皆様がお酒を回し飲みされている光景は嬉しかったです。また、よく主人は人に貝を見せ採った場所などを話して大事にしていました。欲しいと話された方には持ち帰っ ていただきました。今思うと普通の葬儀では味わえない会になったと思います。 本当に良かったというのが実感です。 主人が最期に「いい人生だったよ」と言葉をかけてくれました。 私も主人に「二人で歩けて楽しかったよ」と伝えたいと思います。