社葬は、企業が故人の功績を讃え、社を挙げて弔う重要な儀式です。しかし、多くの参列者が訪れる社葬では一般葬とは異なり、企画から準備、当日の運営、事後対応まで多くの段取りが求められます。本記事では、社葬の基本から当日までの流れ、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。
目次
社葬とは?知っておきたい基礎知識
社葬とは、企業が主体となって故人の功績を讃え、社会的に弔うための葬儀です。社葬の対象となる人は、企業の創業者や会長、社長など、社業の発展に大きく貢献した人です。
普通の個人葬の場合、遺族を施主として家族や親族を中心に行われるのに対し、社葬は会社が施主となり、取引先や関係団体など社外の関係者も参列することになります。
社葬を行う判断基準と検討事項
社葬を実施するかどうかは、故人の生前の功績や役職、会社への貢献度などを総合的に判断して決定します。一般には、創業者や経営層など企業の発展や社会的評価に大きな影響を与え、社の歴史に深く関わった人物が対象となります。
また、社葬は企業主導で行われる点が個人葬と異なり、社会的な注目度や関係者への影響も大きいため、遺族の意向を尊重することが欠かせません。
遺族間で密葬を行った後に、本葬として社葬を行う場合や、遺族と企業が共同で執り行う合同葬もありますが、いずれの場合も費用負担や社内外の調整事項を事前に明確にし、全社的な合意を得たうえで慎重に進めることが重要です。
社葬の全体のおおまかな流れ
社葬は「企画・準備 → 通知・案内 → 通夜・葬儀 → 弔問対応 → 後処理」という流れで進められます。訃報から社葬実施までには、一般的に2〜3週間ほどの準備期間が必要です。この間に、社葬の規模や形式に応じて細かい作業を整理し、関係者全員でスケジュールやタスクを分担することになります。社葬までの主な流れと作業内容はおおまかに以下の通りです。
①企画
社葬実行委員会の設置、会場・日時・予算の決定、葬儀社との打ち合わせ、遺族との調整
②準備
訃報連絡の実施、案内状の作成・送付、受付担当者の配置、香典・供花の取り扱いの確認
③社葬
式次第の進行、弔辞・弔電の奉読、献花・焼香、閉式後のお見送り
④会食
参列者への対応、必要に応じて会食や精進落としを実施
⑤後処理
お礼状・返礼品の送付、費用精算、社内報告、故人の功績を称える社内外への発信
社葬は多くの部署や関係者が関わるため、計画的なスケジュール管理と役割分担が重要になります。ここからは、社葬を円滑に行うための具体的な段取りについて解説します。
社葬の企画(開催決定から詳細計画まで)
社葬の実施が決まったら、まずは「社葬実行委員会」を設置します。これは通常総務・人事・経理・広報などの社葬にかかわる部署から担当者を選出し、統括責任者を明確にします。企画段階では、準備の漏れや誤解を防ぐために、各担当の役割と責任を明確にすることが重要です。
開催日時・会場の決定
社葬は、故人の葬儀から2〜4週間後に行うのが一般的です。主要役員・取引先・関係団体が出席できる日程を調整します。事情がなければ、普通は平日に行います。会場は、アクセスの良さ、参列予定人数等を考慮して最適な場所を選びます。
予算の策定と費用負担の確認
社葬の実施にあたっては、会場費だけでなく、祭壇費用・飲食費・広報費などの項目を明確にし、全体の見積もりをもとに社内の承認を得る必要があります。
遺族との調整
遺族の意向を尊重しながら、式の形式や進行内容、参列者の範囲を確認します。あわせて、服装や供花、弔辞などの細かな点についても事前に打ち合わせを行い、双方が納得できる形で調整します。
葬儀社との打ち合わせ
専門知識を有する葬儀社を選定し、式の準備や運営を委託します。実施にあたっては、式のスケジュールやスタッフ配置、会場設営の計画を事前に共有し、関係者間で認識を統一しておくことが重要です。
社葬の準備(社葬前日までの具体的な準備)
社葬前日までに、丁寧な準備と確認をしっかりしていると、当日はスムーズな運営をすることができます。
案内状作成・発送
社葬の案内状には、日時や会場、供花や香典の取り扱いなど、必要事項を明確に記載します。あわせて送付先リストを作成し、発送時期を計画的に設定することで、関係者への周知を円滑に進めます。
受付担当者の配置
当日の受付担当者や案内係を事前に決定し、役割分担を明確にします。参列者の誘導方法や香典・供花の受け取り手順についても事前に確認しておくことが重要です。
祭壇・会場設営
祭壇のデザインや会場内の席次・動線など、全体のレイアウトを事前に確認します。併せて、受付台や供花台、遺影、看板などの備品の配置を整え、音響・照明設備の動作確認も行います。
弔辞・弔電の管理
弔辞を依頼する人物を選定し、依頼の可否を確認します。原稿については内容や表現を事前に確認して、当日の奉読順や進行を整理しておきます。
返礼品・会食の手配
参列者への返礼品や会食の内容を決定し、数量や手配方法を事前に調整します。返礼品は参列者層や企業イメージに合った品を選定し、手渡し・宅配など配布方法も確認します。会食については、提供形式(立食・着席)やメニューを決定します。
広報・プレス対応
社葬の取材を希望するメディアへの案内や取材範囲の調整を行います。また、社外向けの正式発表文(訃報・社告)も作成して共有しておきます。
また、社員への通知や社内報掲載などを通じて、式の概要や参列方法を周知し、全体の広報対応を統一します。
進行スケジュール作成
当日の進行に備え、リハーサルを含めた詳細なスケジュールを作成します。司会、受付、誘導、弔辞奉読など、それぞれの役割分担を明確にし、時間配分を具体的に設定します。
社葬当日
社葬当日は、参列者の動線や式の進行を計画通り運営することが求められます。開式から閉式、会食までの一般的な流れと、それぞれのポイントを具体的に紹介します。
開場・受付
参列者を丁寧に案内し、受付での混雑を避けるようスムーズな誘導を行います。受付係・案内係の配置を明確にし、芳名帳の記入方法や香典・供花の受け取り手順を確認しておきましょう。また、高齢者や来賓などへの対応にも配慮し、安心して参列できる環境を整えます。
開式の辞・黙祷
司会者が開式を宣言し、全員で黙祷を捧げます。会場内の照明を落とし、静寂の中で故人の生前の功績を思い起こす時間を設けます。葬儀委員長や主催者代表が簡単な開会挨拶を述べ、式全体の趣旨を明確に伝えます。
略歴紹介・弔辞奉読
司会が故人の略歴を紹介し、会社への貢献や人柄を振り返ります。その後、弔辞を依頼した関係者が順に登壇し、故人への感謝や思い出を語ります。
弔電奉読・お別れの言葉
参列できなかった取引先や関係団体、友人などから寄せられた弔電を紹介します。その後、代表者が「お別れの言葉」を述べ、故人の功績と人柄に改めて敬意を表します。
献花・焼香
弔辞の後は、参列者が順に献花または焼香を行います。会場の動線を確保し、誘導係を配置して滞りなく進行できるようにします。企業によっては社員代表や役員から順に行うなど、秩序立てた流れをアナウンスします。
閉式の辞・お見送り
最後に、葬儀委員長や司会者が閉式を宣言し、遺族や参列者へ感謝の言葉を伝えます。遺族・主催者は出口付近で整列し、参列者をお見送りします。退場時には、返礼品の手渡しや案内表示を明確にして混雑を防ぎます。
精進落とし・会食
式終了した後で、精進落としや会食を行う場合があります。会食は立食または着席形式で行い、故人を偲びながら関係者同士が親しく言葉を交わす時間となります。
社葬後の対応・事後処理
社葬が終わった後は、参列者や関係先への感謝の意を丁寧に伝え、経理などの後整理を速やかに行わないといけません。社葬後の処理についてまとめました。
お礼状・返礼品の対応
参列者や供花をいただいた関係先に対し、速やかにお礼状や挨拶状を送付し、感謝の気持ちを正式に伝えます。また、受け取った香典や供花への返礼を行い、発送記録や送付リストを整理します。
費用の精算と報告
葬儀社への支払いや会場費、返礼品費などを経理部門で集計し、社内報告書としてまとめます。承認ルートを明確にし、記録を保管しておくことが重要です。
関係各所への連絡・報告
取引先、関係団体等に対して、社葬実施の報告およびお礼を正式に伝えます。必要に応じて、社外広報文や社内通知を発信します。
社内にむけても同様に、社内報やホームページでの特集掲載、記念誌の作成、追悼式の開催などを通じて、故人の功績を広く伝える取り組みを行います。
社葬を成功させるための3つのポイント
社葬をスムーズに進めるためには、次の3つのポイントを意識しましょう。社内外の関係者が多く関わるため、計画的な準備と明確な役割分担、そしてご遺族や参列者への丁寧な対応を心がけることで、円滑で心のこもった社葬を実現できます。
スピーディーな社内体制の構築
社葬は複数の部署や関係者が関わるため、スピーディーに実行委員会を設置し、役割と責任範囲を明確にしておきましょう。定期的に進捗を共有・確認し、必要に応じて調整を行うことで、準備の漏れや当日の混乱を防ぎ、全体を円滑に進行できます。
遺族との十分なコミュニケーション
社葬は企業主導で行われますが、遺族の意向を尊重することも欠かせません。遺族の希望を事前に確認し、できるだけ反映させることが大切です。遺族との信頼関係を第一に、誠実に対応しましょう。
信頼できる葬儀社や業者の選定
社葬を円滑に進めるためには、信頼できる葬儀社や協力業者を選ぶことがとても大切です。見積もりを依頼する際は、費用の内訳やサービス内容をしっかり確認し、不明点をそのままにしないことがポイントです。
また、やり取りが丁寧で、相談しやすいかどうかも重要です。主催側の意向をきちんと汲み取ってくれる業者であれば、信頼関係を築きながら安心して準備を進めることができます。
まとめ
社葬は、企画から準備、当日の式典、事後対応まで、細やかな計画と関係者との連携が必要です。実行委員会による役割分担や遺族との丁寧なやり取り、専門葬儀社への委託とスケジュール共有が円滑な進行のポイントです。
遺族や関係者への細やかな配慮を忘れずに、誠意ある対応を心がけることで、社葬を通して企業の誠意やブランド力を示すことができます。
NHK「おはよう日本」でStoryが紹介されました

















