社葬の経費はどこまで認められる?費用内訳・相場・分担・処理フローを徹底解説

社葬は、企業にとって多くの関係者を招待するとても重要なイベントで、かかる費用も高額になります。社葬の準備や進行をスムーズに進めるには、社葬にかかる経費の項目についてもしっかり把握しておく必要があります。

この記事では、社葬の費用内訳や金額の相場、また、経費処理ルールや実務フローについても役に立つ情報を解説します。ぜひ参考にしてください。

 

社葬費用はどれくらい?相場と規模別の目安

社葬の費用は、主催する企業の規模や参列者数、会場の選定によって大きく変わります。中小企業、大企業・上場企業の2つのパターンで見ていきましょう。

中小企業の場合

一般的に、中小企業の社葬の相場は300万〜500万円程度です。自社の工場や会議室などの法人施設を社葬の会場として使用することもあります。祭壇のランクは、社葬の目的に応じて、簡素過ぎない一定以上のものを選ぶと良いでしょう。

大企業・上場企業の場合

大企業・上場企業の社葬の費用は、1000万円を超える規模になることもあります。グローバル企業であれば海外の取引先を招待することもあり、そのために使用する会場やサービスの質も高くなる傾向があります。

規模が大きく、会場が大きくなれば、その分案内するスタッフや案内図、記念品などの数も比例して増えていきます。

 

社葬にかかる主な費用

社葬は多くの参列者に対応するために、念入りな事前準備を行うことが大切です。また、かかる費用の経費処理や税務上の扱いについても考慮し、適切な対応を行わなければなりません。

ここでは、費用の項目別に役割や重要性について説明します。

会場費(ホールや寺院)

一般的なセレモニーホールや葬儀会館など、小規模な会場で社葬を行う場合は、おおよそ100万〜300万円程度で実施できます。

ただし、参列者が100名を超える規模になると、ホテルの宴会場や大型葬儀ホールなど、より広い会場が必要になります。この場合の費用は300万〜600万円前後が目安です。

さらに、300名以上、場合によっては1000名近くの参列者を想定する大規模な社葬では、一流ホテルや大規模ホールを使用することが多く、600万〜1000万円程度の費用がかかります。

祭壇・装飾費用

社葬の祭壇費用は、規模やデザインによって大きく異なります。伝統的な白木祭壇は20万〜80万円ほどですが、社葬の場合は生花で彩る花祭壇が多く、50万〜200万円が一般的です。

また、企業イメージや故人の人柄を反映したオリジナルデザイン祭壇を作る場合は150万〜500万円以上、大規模な花祭壇では1000万円に達することもあります。

 

飲食費用

社葬での飲食費用は、軽食かコース料理かといった料理内容、提供方法(立食・着席)、会場の種類(ホテル・葬儀会館)によって変動します。簡略化した場合は参列者1人あたり1000〜3000円程度、軽食を提供する場合は3000〜5000円前後が目安です。

 

社葬では故人を偲びながらも企業としての品位を保つことが重視されるため、形式に合わせて無理のない範囲で飲食内容を調整することがポイントです。全体予算300万円の社葬であれば、飲食費は30〜60万円程度を想定するとバランスがとれます。

 

運営スタッフ人件費

社葬の運営スタッフの人件費は、司会者や受付、警備員、駐車場誘導などにかかる費用です。概算で40万~80万円程度かかります。

 

葬儀社への委託費

社葬は一般葬よりも準備項目が多く、進行管理や関係者対応などのサポートが含まれるため、通常の葬儀よりもやや高めに設定されています。費用はどれだけ委託するかによって変動するため、できることは自社でやるほうが委託費用の節約になります。

その他の費用として、設備費が40万~数百万円かかることや、新聞広告費、印刷物費用、故人の展示コーナー設置費用なども発生することがあります。

 

会社と遺族の費用分担の考え方

円滑な社葬を実現させるためには、会社と遺族の費用分担の境界を事前に明確にし、両者が合意する必要があります。これにより、トラブルを防ぐことができます。

会社が負担すべき費用

会社が負担すべき費用は、「領収書が発行され、かつ経費計上及び損金処理ができる費用」をさします。例えば、会場費、祭壇費、参列者接待費、供花代などが挙げられます。参列者への接待は、故人を偲ぶだけでなく、今後の業務にも繋がります。

遺族が負担すべき費用

遺族が負担すべき費用は、「個人が負担するのが妥当な費用」になります。例えば、香典返し、宗教儀式にかかる費用(戒名料など)、親族の交通費などが挙げられます。

香典返しは、遺族の個人的な出費として扱われ、宗教儀式の費用は、遺族が宗旨宗派の指定者として負担します。親族の交通費も遺族の私的支出とされることが一般的です。

 

社葬経費が認められる範囲と認められない範囲

次に、社葬経費の範囲について解説します。条件に当てはまる場合、「福利厚生費」として経費計上することが可能です。

 

 経費として認められる費用

経費として認められる費用を表にまとめました。これらの項目は社葬において必要不可欠であり、適切に計上をする必要があります。これらの経費の透明性を保つことで、税務上のリスクを軽減することができます。

 

項目

 

会場費

社葬の会場にかかる費用

祭壇・祭具費

祭壇・祭具にかかる使用料

運営費

社葬の運営にかかる費用

供花・供物・花輪

社会的儀礼にあたる費用

飲食費

会食がメインの場合は、接待交際費として判断されるケースもあり

駐車場料金

周辺の駐車場や臨時駐車場などの料金

送迎費用

来賓や遺族、親戚の送迎の配車費用

運転手や葬儀委員への謝礼

心付けなど

警備員費用

交通整理や式場警備をする警備員の費用

設備費・受付備品など

照明器具、受付テント、受付備品の利用料など

礼状や広告宣伝費など

会葬者への礼状や粗品代、社葬の広告費用など

 

経費として認められない費用

経費として認められない費用を表にまとめました。こちらを参考に経費処理を間違えないように注意してください。

ここにない項目でも経費にならない費用もあるため、心配な場合は必ず経理の担当者や顧問税理士に確認するようにしましょう。

項目

 

密葬代(火葬料金など)

遺族のみで行う場合が多いため、対象外

仏具、仏壇の購入費用

遺族が購入するものとして対象外

墓地・墓石の購入費用

遺族が購入するものとして対象外

納骨費用

納骨するための費用

戒名料

故人につける戒名の費用

遺族の香典返しの費用

会葬者(弔問客)が持参した香典は法人の収入ではなく、遺族の収入として計上されるため対象外

遺族の交通費や宿泊費など

私的支出と判断される

宗教儀式や法事費用

読経代や法事の飲食代、初七日・四十九日の費用など

棺代、骨壺代

棺や骨壺にかかる費用

死亡診断書費用

死亡診断書にかかる費用

仏壇、位牌

遺族が購入するものとして対象外

精進落としの費用

基本的に遺族が負担

 

 

社葬の経費と税務上の注意点

社葬費用の経費に関しては、以下の「法人税法基本通達」に定められています。

 

【法人税法基本通達9-7-19】

法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。

 

 

経費かどうかの税務署の判断基準

税務署の判断基準は、かかった費用が「業務関連性」と「社会的儀礼」の範囲内かどうかです。社葬にかかる経費がこれらの基準に合致する場合、経費として認められますが、社葬の目的や規模に対して不釣り合いな費用や過度に豪華すぎる出費は否認される可能性があります。

また、取締役会で社葬を決定した議事録を作成し、領収書とともに保管しておく必要があります。できるなら社葬取扱規定を事前に用意することで、社葬の規模や負担費用、葬儀委員長の選定などを明確にしておくことも大切です。

 

勘定科目を統一する

勘定科目を統一することは、経費処理において非常に大切です。社葬費用が「交際費」「福利厚生費」「雑費」など異なる科目で処理されるケースがあるため、経費の管理が難しくなります。

そのため、科目を統一して処理することにより、社内の経費業務の効率化と税務上のリスクを軽減できます。

仕訳としては、社葬費用は福利厚生費として処理され、借方に「福利厚生費」、貸方に「現金預金」と計上します。

領収書・証憑を整理して保管する

葬儀社の請求書や供花、返礼品の領収書、香典返しや遺族負担費用は整理・区分して明確に管理することが重要です。これにより、税務調査に備えた書類管理(領収書・出席者名簿・取締役会議事録)をスムーズに行うことができます。

また、領収書が受領しづらい僧侶の読経料についても、読経を行った証明や出金伝票を作成するようにしましょう。

 

社葬の経費処理のフロー例

社葬の経費処理には、いくつかの重要なステップがあります。次のような経費処理のフローを適切に行うことで、社葬の経費処理を円滑に進めることができます。

<社葬の経費処理のフロー例>

  1. 社葬実施の社内決定(取締役会・稟議)

まず、社内決定が必要です。取締役会や稟議を通じて、社葬の必要性や規模について合意を得ます。

  1. 見積もり取得・費用項目の整理

見積もりを作成し、会場費や運営スタッフ費などの費用項目を整理します。複数社から相見積もりを取ることもおすすめします。

  1. 会社と遺族の費用分担を明確化

会社と遺族の費用分担を明確にし、トラブルを避けるためのコミュニケーションを図り、両者で合意を得ます。

  1. 社葬の実施

    事前の準備を踏まえ、社葬を円滑に実施します。

  1. 領収書整理・経理処理・決算反映

社葬関連でかかった費用の領収書を整理し、経理処理を行います。これを決算に反映させることで、正確な経費記録が実現できます。

 まとめ

社葬にかかった経費は「業務関連性」と「社会的儀礼」がポイントです。そのため、費用内訳や相場、分担、実務フローを理解しておくことが重要です。正しい処理を行うことで、税務リスクを防ぐだけでなく、企業の信頼性を守ることにもつながります。

社葬は故人を偲ぶ重要な儀式であり、企業としての責任をアピールする場でもあるため、社葬経費を理解したうえで、しっかりとした計画を立てる必要があります。

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