自由葬(無宗教葬)の流れ・式次第/注意すべきこと/葬儀後の過ごし方
目次
無宗教の自由葬の特徴
自由葬とは、宗教儀式の決まりを取り入れず、自由な形式で執り行う葬儀のことです。
日本人の多くは、普段から宗教心を強く持っているわけではなくても、葬儀は仏式で行うものという観念を強く持っています。
特に、先祖代々のお墓が置かれた菩提寺のある方は、葬儀はそのお寺の住職・宗教者を招いて仏式で執り行うのが通例です。
しかし近年、特に若い頃から都市部で生活している方の中に、そうした価値観を持たない方も増えてきました。
例えば子どもが親から独立して一家を構えた場合、「実家には菩提寺はあるものの、自分たちには特にそんなお寺はない…」という状況に置かれるケースが少なくありません。
そのような方の中に、仏式を含む宗教儀式のルールに縛られず、自由な形式で葬儀を執り行いたいと考える方が増えてきたのです。
自由葬の大きな特徴は、宗教的なしきたりにとらわれず、よりその人らしいプログラムで葬儀を執り行える、という点にあります。故人の趣味や仕事内容にちなんだ演出を葬儀に取り入れることもできるのです。
自由葬の費用は、プログラムの内容によって大きく変わります。安く抑えようとすると30万円程度から予算を組めますが、高額になると200万円以上かかることもあるようです。
自由葬の流れ、式次第
決まった形式のない自由葬ではありますが、定番ともいえる当日のプログラム構成があります。具体的な自由葬の流れ/式次第としては、以下の通りです。
①司会者(喪主)による開式の辞
司会者となる方がいる場合はその方が、いない場合は喪主が開式の言葉を述べます。
②故人の人生を偲ぶ写真、映像などを放映する。
故人の誕生から亡くなるまでの写真のスライドショーを、ナレーションをのせながら放映します。
③家族、友人からの弔辞やお別れの手紙が読まれる。
当日参列できなかった方から送られた弔電も、司会者・喪主がこの場で紹介します。
④参列者による献奏、献花、献灯が執り行われる。
葬儀の内容によって実施される内容は変わります。献奏は、プロの演奏家の方にお願いする場合もありますが、演奏が得意な親族や友人が行うことも多いです。
献花は参列者が祭壇に用意されている花を一輪ずつ順番に捧げていくという方法、献灯は参列者が順番に一つずつミニキャンドルに火を灯していく方法を指します。
④喪主のあいさつ
参列者による献奏や献花、献灯などが終わったら、締めくくりとして喪主があいさつを行います。あいさつの最後に、参列者に対してお礼を述べるのが通例です。
⑤司会者(喪主)による閉式の辞
司会者の方が、閉式の言葉を述べます。
自由葬メリットとデメリット
自由葬では、特定の宗教儀式に基づく葬儀・告別式では行いにくいことを、自由に執り行うことができます。
宗教的な慣例やしきたりにとらわれずに式を執り行えるという点は、宗教に対して特に関心や興味のない方にとっては大きなメリットを感じられるでしょう。当日は宗教者を呼ばないため、寺院などに支払う費用もかかりません。
しかし、宗教に対して完全に無関心な方ばかりではないのも事実です。
例えば普段の生活では宗教色が薄くても、「葬儀のときはやはり仏式で…」と考える日本人は少なくありません。そのような方が、音楽が流れ、宗教家・僧侶がまったくいない葬儀場に足を踏み入れると、少なからず違和感を覚えるでしょう。
自由葬には、社会の誰もがその形式での葬儀を望んでいるわけではない、という問題点・デメリットがあります。自由葬を執り行う場合は、親族や参列者に対する十分な配慮が必要です。
自由葬のメリット
思い通りの演出ができる
自由葬を執り行うことの最大のメリットは、無宗教形式であるため思い通りの演出ができるという点にあります。
葬儀の場で、故人の趣味、仕事、功績や実績など、これまでの人生の歩みを紹介できれば、参列者は故人についてより深く知ることができ、生前の姿を記憶に留めておいてくれるでしょう。
故人や家族が望む形で、生前お世話になった方とお別れができるのは、自由葬の大きな長所といえます。
宗教者へのお礼がいらない
また、自由葬には宗教者への謝礼が発生しないというメリットもあります。例えば仏式の場合、お通夜・本葬に僧侶の方をお呼びすると、戒名料込みのお布施代として通常30~60万円ほど必要です。
自由葬であればこうした宗教家に支払う費用が発生しないので、葬儀費用を低く抑えることができます。できるだけお金をかけないで葬儀を執り行いたい場合、自由葬は利点の大きい葬儀といえるのです。
自由葬のデメリット
具体的にやりたいことがないと企画が難しい
演出の自由度が高い分、葬儀の場で何をしたいのかが明確でなければ、自由葬を企画できません。自分の裁量が多い分、企画・計画すべきことが多くなってしまうのは、自由葬の難点といえます。
菩提寺とのトラブルになる危険がある
先祖代々の墓があり、何代にもわたってお世話になっている菩提寺がある場合、自由葬で葬儀を執り行うと後日トラブルに発展する恐れがあります。
親族の理解を得られない恐れがある
特に年配のだと、葬式は仏式など宗教のルールに則って行うべきだと考える方は多いです。自由葬を執り行いたいと申し出ても、親族からの了解を得られない場合もあります。
葬儀は親族の了解を得て行うものですから、強い反対があると自由葬での葬儀は難しくなるでしょう。
参列者が混乱する恐れがある
自由葬という葬儀形態は、仏式による葬儀などに比べると一般的とはいえません。葬儀=仏式と考えている方にとって、自由葬による葬儀形態はまったく未知の葬儀です。
十分な説明がないままだと、参列者は「この後は何をするの?」「この後はどこに行けばいいの?」と混乱する恐れがあります。
自由葬の後の供養について
自由葬を終えてお墓に納骨する場合、仏式の四十九日のような法要を行うかどうかは基本的に自由です。お墓も無宗教としたい場合は、宗教を問わず受け入れてくれる墓地に納骨する必要があります。
公営墓地は基本的に宗教に関係なく受け入れていますし、民間霊園も無宗教の場合が多いです。近隣地域にあるこれらの墓地の利用を検討するとよいでしょう。
ただ、寺院が管理、運営している墓地については、そのお寺の檀家にならないと利用できない場合があります。自由葬後のご供養も無宗教で行うのであれば、寺院の墓地は避けましょう。
納骨後、仏式では一周忌や三回忌といった年季法要の慣習がありますが、無宗教であればそのようなルールに従う必要はありません。
ただ、自由葬・無宗教形式で葬儀、納骨をした後、命日に合わせて毎年食事会を開くご家庭もあります。遺影などを持参できるレストランを探し、近親者を招いて故人を偲ぶのです。
お墓に納骨しておらず、食事会のときに遺影と一緒にご遺骨を持参したいという場合、事前にレストラン側の許可をもらいましょう。
なお、仏式では一般的である位牌や仏壇も、無宗教の場合は必要ありません。ただ、家で故人を偲べるスペースを確保したいという方もいるでしょう。
その場合、ご自分で手作りの祭壇を作ってもよいですし、最近は仏教色を感じさせないデザインの仏壇も増えていますので、購入して設置するのもひとつの方法です。
必要と感じたら宗教儀式を行っても◎
自由葬で葬儀を執り行ったからといって、葬儀後のご供養のあり方も必ず無宗教にする必要はありません。四十九日法要や年季法要を仏式で行うなど、宗教儀式を求めることもできます。
もし親族の中に宗教儀式による法要を望む方がいるなら、そのお気持ちに配慮する必要もあるでしょう。葬儀を終えた後、どのような形でご供養を行っていくのか、親族の間で改めて話し合うのが望ましいといえます。
まとめ
無宗教葬とも呼ばれる自由葬は、宗教的な作法にとらわれず、自由な形式・演出にて執り行える葬儀です。自由葬では、故人・ご遺族が理想とする葬儀を執り行えますが、やりたいことが明確に定まっていなければ、葬儀社など業者側との打ち合わせがスムーズに進まず、予算の確定にも時間がかかってしまいます。
自由葬で執り行う場合は、宗教儀式を行う代わりにどのような内容の葬儀にするのか、きちんと考えておくことが大事です。もし特別な演出を施したい場合は、本人が生前のうちにご家族と話し合っておくのも1つの方法といえます。
NHK「おはよう日本」でStoryが紹介されました