年々増える、海外での死亡者『客死』
邦人救護における死亡者数 (外務省・海外邦人援護統計より作成)
海外旅行に行く人は年々増えています。また、日本の企業にお勤めで、海外に赴任している方や、海外企業で働いている日本人も増えてきました。そうした中、事故や病気など、海外でお亡くなりになる方も増えています。旅先で亡くなることを『客死』といいます。今後はテロなどの被害で命を落とす方がいらっしゃるかも知れません。自分の身近な人や友達が海外で亡くなったらどうしたらいいのでしょうか?大切な方が海外にいる方にとっては、あまり考えたくないことかもしれませんが、万一に備えて、知っておきましょう。
方法と手続き
海外で邦人がお亡くなりになった場合、大きく2つの方法があります。海外で火葬まで済ませてから日本にご遺骨を持ち帰る方法と、死亡後、仮想せずにご遺体のまま飛行機で運んで来る場合になります。それぞれについてご説明します。
■ 海外で火葬する場合
事故でお亡くなりになりご遺体の損傷が激しい場合や、登山の滑落事故などご遺体の回収場所が交通の便があまり良くない所の場合、現地で火葬を済ませてしまうことが多いようです。
・ 流れと手続き
海外でお亡くなりになった後、まず、現地の医師による死亡診断書とその翻訳文が必要になります。これがなければ、日本で死亡届を出すことができません。次に、在外公館(大使館や領事館など)に死亡届を提出し、『埋葬許可証』と『遺体証明書』の発行を受けます。それを持って、現地で火葬を行います。海外でお骨壷を入手するか、日本からお骨壷を買って送ってもらい、ご遺骨をお骨壷に入れた後、手荷物として持ち帰ることになります。土葬の多い国ではお骨壷も手に入りにくい為、代わりの容器を用意して持ち帰り、日本で移し替えたほうが良いかもしれません。
・ 国内でのお別れ会(お葬式との違い)
帰国後、しばらくしてから日本でお別れ会を開くことになります。お葬式と全く同じように、全員喪服で参列し、僧侶の方にも来ていただいて読経し、お焼香などもする形になります。ただし、ご遺体はありませんので、お骨壷のままお葬式をすることになります。実は、日本のいくつかの地域では、普段からお骨壷でお葬式を施行するエリアもあります。
また、特に僧侶などは呼ばずに、身内や友達だけでお別れ会をすることもあります。そういった場合には、平日の夜にレストランやホテルに集まって、映像や写真で故人を偲んだり、参加者がお別れの手紙を読み上げたりします。特に、現役世代の方で若くしてお亡くなりになられた方は、こういった方法を取る方が多いようです。
・ 費用
火葬料金、搬送料金などは、エリアによって異なりますが、あまり高額に設定されていることはありません。ご遺族や親しい方が現地に行く飛行機代と滞在費に数万円〜10万円程度加算程度で済むことが多いようです。
■ 遺体のまま搬送し、国内で火葬する場合
海外でお亡くなりになり、すぐにご親族が駆けつけることができた場合、そのまま日本に連れて帰ることも可能です。ただし、通常の貨物とは異なりますので、手続きが必要です。
・ 流れと手続き
基本的には航空貨物で運ぶことになります。しかし、ドライアイスを飛行機に搭載することは禁止されているため、そのままでは搬送できません。防腐処置(エンバーミング)を施す必要があります。日本ではまだあまり馴染みのないエンバーミングですが、キリスト教やイスラム教の国では土葬が中心であり、エンバーミングは一般的に行われています。防腐処置をしたあと、航空貨物として手配し、運ぶことになります。また、日本についてからも、空港から安置所・葬儀所への搬送が必要になります。これらの手続きをスムーズに行うためには、現地の日本大使館・領事館の助けが必要になる他、日本側の葬儀社とも連携しながら進める必要があります。火葬してから運ぶ場合に比べ、かなりの手間がかかります。また、海外の棺は大きさも形も日本のものとは違うため、日本の火葬炉に入らないことも。日本で火葬用の棺を用意する必要がある場合もあります。
・ 費用
現地でエンバーミングをした上、貨物便の飛行機で運んでくるのには相当な費用がかかります。空港までの搬送費用などもかかります。一般的に、ご遺体の搬送だけで100-150万円程度かかると言われています。
海外旅行保険の補償範囲
海外旅行に行くときに保険に入っている人は多いかと思います。また、クレジットカードへの自動付帯などもあります。これらを利用している方が海外でお亡くなりになると、300万〜1,000万円程度の死亡保険金が遺族に支払われます。また、保険によっては「救難者費用」が支払われることがあります。これは、海外で遭難したときに、救助をする人に支払う費用に当てられます。日本から救援に行く場合、一定の範囲内での渡航費や宿泊費用もカバーされるようです。
海外からご遺体を搬送してくる費用をこれらの海外旅行保険に当てることは難しいですが、死亡保障の範囲内で、搬送・葬儀・お別れ会などを実施することはできそうです。
日本でのお別れ会
【エピソード1】 不仲な家族がお別れ会をきっかけに参集
Aさんは、美術品のバイヤーの仕事をしている女性でした。日本で結婚し、出産したものの、海外での仕事が多く、子供が成人してからは完全に日本からは離れ、生活の拠点は海外に移ってしまっていました。Aさんの夫や、子供たちも、Aさんがいないことで集まる機会がなくなり、いろいろな事情から互いに反目するようになっていました。
そんなAさんが、海外の自宅の近くで交通事故に合い、お亡くなりに。Aさんの仕事の関係者から、Aさんの家族に連絡が入り、長男が現地に向かいました。現地で火葬を済ませ、日本に帰ってきた長男は、気乗りがしなかったのですが、家族全員に連絡を取ってみることに。
自分たちを置いて、勝手に海外に行ってしまった母親のことを恨んで、誰も来ないのではないかと思ったのですが、みな、一言言いたい、と。そこで、小さいお別れ会を開くことにしました。当日は、ただ集まり、仕出し弁当でも食べて終わりにすればいいかと思っていたのですが、いざ集まると、みんな母の話ばかり。皆それぞれに違う思い出を話している間に、いがみあっていたこともいつか忘れ、一緒に笑ったり涙したりという暖かな会になりました。
母が遠い異国に生きて家族が離散し、亡くなって戻ってきたことで家族の輪が戻った。母の死はそんなきっかけになりました。
【エピソード2】 留学先の子供が無念の帰国
Bさんのお子様は米国に留学されていましたが、そこで事件に巻き込まれてしまい、命を落としてしまいました。事件直後、入院されているところにBさんが駆けつけ、Bさんが見守る中、息を引き取ったということです。悲しみにくれたBさんですが、病院はあまり長い間安置することを許してくれませんでした。すぐに現地の領事館に連絡を取り、搬送の手配をしました。火葬は日本ですることにしたので、まずはエンバーミングをした上で、日本まで飛行機で届けました。
日本に帰ってきてから、留学仲間や中高の友達が集まってくれ、そこでお別れ会を開きました。友達一人ひとりが泣きながら子どもの名前を呼ぶ度に、Bさんも胸が張り裂けるような思いをしたそうです。
お子様の友人の一人が「彼女が亡くなったのは本当に残念だけど、一番悔しく思っているのは本人だと思う。留学先で本当に頑張っていたことはみんなが知っている。彼女の頑張りを無駄にしないよう、これからは自分たちが頑張っていきたい」そう伝えてくれたことで、少し救われた気がしたBさんでした。
海外では毎年500-600名程度がお亡くなりになっている。
外務省が発表している「海外邦人援護統計」 によると、年間で500-600名程度の日本人が海外で命を落としています。多い原因は傷病ですが自殺や事故でお亡くなりになるかたもいらっしゃいます。
海外で火葬し、日本で葬儀・お別れ会が最適
海外でご家族がお亡くなりになってしまった場合、海外で火葬を済ませ、日本に帰ってきてから、改めて葬儀・お別れ会を実施するのが最適です。海外で火葬・葬儀・埋葬までやる場合でも、日本であらためてお別れ会をすることをおすすめいたします。
私たちStoryでは、海外でご家族がお亡くなりになった方のために、日本での配送の手配や、お別れ会・偲ぶ会のプロデュースをさせていただいています。もし、お困りの際にぜひご相談下さい。
5/5 (19)
NHK「おはよう日本」でStoryが紹介されました